見てみたい景色



最近、色んな仕事を受けてみている。

今まで『建築家』は、下請けはやってはいけないし、崇高であるべきだ、くらいに考えていた。

いや、誰に教わったのか、そうあるべきだと思い込まされていた。


今の自分は、もっと泥臭い、全く華やかではない、

日の目を見ないような事をやってみたい、と考えている。

そう考えていると不思議なもので、そんな仕事のお誘いを頂くことになる。


どんな仕事であれ、頂けるだけ有り難い。感謝して向き合うべきだ、とは思わない。

やはり、面倒な仕事は面倒だし、汚い仕事は汚いものだ。

それを分かっていて、それでも『やってみたい』という興味の方が勝るときだけ、受けてみるのだ。


汚れてもいい格好で、ヘルメットを被って、そいつにライトを付けて、

暗い建物の中を計測して歩く。

時間的余裕も少なく、早く正確に、テキパキと動く。

車の中で冷えたコンビニ弁当を食べ、食べ終えるとすぐに仕事に戻る。


・・・。


なんか、楽しい。

エアコンのきいた室内で音楽を聞きながら、コーヒーしばきながらパソコンに向かう日常。

ジャケットを羽織って、したり顔でクライアントに向き合う日常。

それとは対極にある現場。

生きている。と感じられるのだ。


この仕事のお誘いを頂いた方からお借りしているヘルメット。

それを次男坊に被せてみる。

子供はなんでもオモチャにする。なんでも楽しくする。

その無邪気な笑顔、振舞いに、人間の本来性を考えさせられる思いだ。


頭で考えるのはヤメにしようと思ってしまう。

そういうのは結局、自分を縛り付けてしまうのではなかろうか。

メリットは一周まわって、デメリットになるかも知れない。その逆も然り。


話しは反れるが、今、画家さんのアトリエを設計させてもらっている。

この人がまた、絵に命を懸けている。魂を差し出しているのだ。

浅はかな自分の『売れなかったらどうするんですか?』という質問に対して、

『仕方ない。』の一言。

見えている世界が違うのだ。


一体何を見ているのだろう?何が見えているのだろう?

そう考えると、それを見てみたくて仕方がなくなってくる。

それを見るために、自分にできることは・・・。


答えは分かっていても、もう少し時間が必要なのだ。

どう考えても人生の幸福は、なんとなく上手くやること、ではない。

最近、岡本太郎の本を読んだ。

あれくらい突き抜けた、変態的発想の先にしか見えてこない世界。

どんなんだ?

気になる。


今日も新たなお客さんとお話しさせてもらった。

もはやこの仕事を決めよう!という思いは無い。

お互い、腹を割って話して、お互いその気になれば前に進める。

乗り気になれなかったら、早めに断る方がお互いの為にも良い。

本音で語らうことが、一番の近道だと思ってやまない。

取り繕った言葉など、本音が見え透いてしまうだけだ。


本題に戻って、色んな仕事を受ける、ということは、

それだけ世界が広がる。色んな立場の人の気持ちが分かる、という事だと思う。

それを知った上での発言、行動は、もしかしたら『厚み』が違ってこないだろうか。

だから基本これからも、変な仕事は受けていこうと思う次第だ。

受けない仕事の定義は、『なんか嘘っぽい』である。

気持ちが乗っている依頼は、基本的には何でもウェルカムなのだ。


人生の時間は有限だ。

気になる景色を見てみたいのだ。

 

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